インプラント治療

インプラントとは

歯科インプラントとは、人工的な歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯冠を取り付ける治療方法です。天然の歯の様に良く噛めるようになり、見た目にも審美性の高い治療が可能です。

インプラントの歴史

インプラントの歴史は、古代のマヤ文明が知られています。紀元前600年から紀元700年頃の時期に、マヤ文明の人々は動物の歯や貝殻を使って歯の欠損箇所に埋め込むことを試みました。これは初期の歯科インプラントの一形態と見なされています。現代の歯科インプラントは、ブローネマルク博士によって開発されたオッセオインテグレーション理論が重要な転機となりました。ブローネマルク博士は、チタン製のスクリュー状のインプラントを骨に埋め込むことで、骨との結合(オッセオインテグレーション)が生じ、安定した人工歯冠を取り付けることができることを発見しました。このオッセオインテグレーション理論の発見により、歯科インプラント治療は大きく進歩しました。その後、インプラントのデザインや材料の改良が行われ、さまざまなタイプのインプラントが開発されました。また、診断技術の進歩や手術技術の向上により、より正確で安全なインプラント治療が可能になりました。現代のインプラント治療は、骨の統合性や咬合力の再現、審美性、快適さを追求するためにさまざまな技術や材料が利用されています。インプラント治療は欠損した歯を補うだけでなく、顎の骨の形状を保持し、口腔機能を回復させる重要な治療法として広く認知され、普及しています。

インプラントの特徴

インプラントは欠損した歯を補うだけでなく、口腔の健康と機能を回復するための優れた治療法です。

以下の様な特徴があります。

自然な外見と嚙み心地

インプラントは人工的に作られた歯根であり、人工歯冠が取り付けられます。そのため、周囲の歯との調和がとれ、自然な外観と感触を実現することができます。

高い機能性

インプラントはしっかりと骨に結合し、咀嚼や話すといった口腔機能を復元することができます。食事や日常生活において自信を持つことができるようになります。

長期的な持続性

インプラントは耐久性が高く、正しいケアとメンテナンスが行われれば、数十年以上も持続することがあります。他の補綴法と比較して、再治療の必要性が低いのも特徴です。

周囲の歯に影響を与えない

伝統的なブリッジや義歯とは異なり、インプラントは周囲の健康な歯に依存しません。隣接する歯を削る必要がないため、周囲の歯の健康を保持することができます。

骨の保持

インプラントは人工的な歯根として骨に結合するため、顎の骨の減少を防ぐことができます。これにより、顔の形状や輪郭を維持することができます。

快適さと安定性

インプラントはしっかりと骨に結合するため、動揺やずれることがありません。そのため、食事や話すときに安定感を感じることができ、快適な口腔環境を提供します。

インプラントの術式

もちろんです。インプラントの術式には「一回法」と「二回法」の2つの主要な方法があります。どちらの術式が選択されるかは、患者さまの状態や歯科医師の判断によります。一回法は治療期間が短くなりますが、骨の状態やインプラントの位置によっては適していない場合もあります。二回法はより長い期間と2つの手術を必要としますが、骨の結合と治癒を確認するための時間をしっかり取ることができます。

一回法

一回法では、インプラントの埋入と同時に人工歯冠の取り付けが行われます。手術の際にインプラントを骨に埋め込み、その上に一時的な保護カバーを取り付けます。骨とインプラントが十分に結合するまでの期間を経て、人工歯冠を取り付けるための追加手術は必要ありません。一回法は時間と手続きの面で効率的であり、患者さまにとってはより短期間で治療を完了することができます。

二回法

二回法では、インプラントの埋入と人工歯冠の取り付けを2つの手術に分けて行います。最初の手術ではインプラントを骨に埋め込み、その上に保護カバーを取り付けます。骨とインプラントが結合するまでの期間(通常は数ヶ月)を待ってから、二次手術で保護カバーを取り外し、人工歯冠を取り付けます。二回法はより緩やかな組織修復を可能にし、インプラントの安定性と成功率を高めることができます。

顎の骨の厚みなどが足りない場合

顎の骨が不足している場合でもインプラント治療を可能にするために特殊な手術を行うことができます。ただし、各手術の適応や成功率は個人の状態によって異なるため、歯科医師との相談が重要です。適切な手術方法を選択し、骨の状態を改善することで、安定性の高いインプラント治療を実現できます。

骨移植(ボーングラフト)

骨が不足している場合、他の部位から骨を取り出し、インプラントを埋め込むための欠損した骨の領域に移植します。これにより、十分な骨量が確保され、インプラントの安定性と成功率が向上します。

サイナスリフト(上顎洞挙上術)

上顎の後ろの歯の領域にインプラントを埋入する場合、時には上顎洞(副鼻腔)との距離が近く、骨の厚さが不十分なことがあります。サイナスリフト手術では、上顎洞を持ち上げて骨を増やし、インプラントを安定させるための十分な骨量を確保します。

分割埋入法(スプリットクレスト)

インプラントを埋入するために骨の幅が不足している場合、分割埋入法が使用されます。この手法では、骨の中央に切れ込みを入れ、それを広げることで骨の幅を増やし、インプラントを適切に埋め込むことができます。

インプラントのメインテナンス

インプラントのメインテナンスは、長期にわたりインプラントを維持するために「必要不可欠」です。インプラントのメインテナンスは、患者さまお一人おひとりの状況やインプラントの種類によって異なる場合があります。定期的なメインテナンスを受けることで、インプラントだけでなく口腔内の状態を良好に保ち、よりインプラントを長持ちさせることにつながります。

周囲組織の健康維持

インプラントは周囲の歯肉や骨組織と密着しており、それらの組織の健康状態がインプラントの安定性と持続性に直接影響します。定期的なメインテナンスにより、歯周ポケットの深さや歯肉の状態を評価し、早期の歯周病や炎症の兆候を検出し、適切な処置を行うことができます。

インプラントの清掃とメンテナンス

インプラント周囲には歯垢や歯石が蓄積する可能性があります。定期的なメインテナンスでは、専用の器具や技術を使用して、インプラント表面の清掃を行い、歯周ポケット内の菌や汚れを除去します。また、インプラント上部のクラウンやブリッジの清掃や調整も行われます。

インプラントの寿命延長

メインテナンスにより、インプラントの寿命を延ばすことが可能です。定期的な検診やクリーニングにより、早期に問題を発見し、適切な処置を行うことで、インプラントの長期的な安定性と機能性を維持することができます。

口腔全体の健康管理

インプラントは単体の治療ではなく、他の歯や口腔組織との調和が重要です。定期的なメインテナンスでは、他の歯や歯周組織の健康状態もチェックし、全体的な口腔健康の管理を行います。

インプラント周囲炎にならないために

インプラント周囲炎は、インプラントと周囲の歯肉や骨組織との間に炎症が起こる状態を指します。通常、インプラントはしっかりと骨に統合し、周囲の組織との接合部分は健康な状態を保ちますが、ある要因により炎症が発生することがあります。主な原因は、口腔衛生の不十分さやメインテナンスの欠如です。歯垢や歯石がインプラント周囲に蓄積し、細菌の増殖を引き起こすことで炎症が発生します。また、歯周病や歯肉炎の既往がある場合にも、インプラント周囲炎のリスクが高まります。インプラント周囲炎の症状には、歯肉の腫れや赤み、出血、口臭、インプラント周囲の痛みや違和感があります。また、インプラントが不安定になることや、骨組織の減少を引き起こす可能性もあります。早期にインプラント周囲炎を発見し、適切な処置を行うことが重要です。歯科医師や歯科衛生士による定期的な検診やクリーニングにより、インプラント周囲の衛生状態を維持することが大切です。また、適切な口腔衛生の維持や日常的なセルフケアも重要です。インプラント周囲炎の早期治療は、炎症の進行やインプラントの損失を防ぐために不可欠です。定期的なメインテナンスと自己管理の徹底により、インプラントの長期的な成功と健康を維持することが目指されます。